狼ゴコロは愛のイロ
*雅SIDE
「玖美?!玖美、返事してくれ!!」
玖美の荒い息遣いしか聞こえない。
まさか、まさか、犯人が近くに?
いてもたってもいられず、電話のために移動してきたトイレから飛び出した。
―――・・・
――――――――――・・・
「申し訳ありませんが―――・・・」
向かった先は玖美の会社。
無断で出てきてしまったが、いたしかたない。
これは・・・・・緊急事態なんだ。
「―・・・宗苑様には、どのようなご用件で」
「夫です。緊急に話さなければならないことが出来まして・・・」
夫という言葉に、受け付け嬢は有り得ないとでも言うように、驚いた顔をしたが、すぐに繋いでくれた。
それから10分後。
「雅!!」
奥の方から、走ってくる玖美の姿が見えた。
あぁ、ここが家ならば・・・。
思い切り抱き締めてキスをして、不安な顔をする君を安心させてあげられるのに・・・
「玖美、良かった、ケガはないみたいだね」
「うん。のどかが来てくれたから。ごめんなさい、さっきは。仕事中に」
「いや、俺もすぐに出られなくてごめん。・・・何があったんだ?」