狼ゴコロは愛のイロ
時間がないが、聞かずにはいられなかった。
額に汗をかいた跡があるし、今だってこんなに震えてる。
「玖美、手を貸して」
手を差し出すと、躊躇うことなく手を握ってくれる彼女に安堵する。
壁ぎわによけてはいるが、さっきから視線が集まってきていて居づらかった。
玖美は本当に男女ともにモテる。
結婚式に、玖美の同僚もたくさん呼んで正解だった。
たった一つの指輪じゃぁ、虫除けにはあまり効果がなさそうだ。
「雅、来てくれてありがとう。何があったかは、帰ってから話すね。あたしは大丈夫。雅が来てくれたから」
「玖美・・・」
「だけどお願い。帰ったらたくさん抱き締めて?・・・本当に怖かったの」
消えそうな声で訴える彼女を一人にするのが、辛かった。
「三上さん。仕事場で何をしてるんですか?」
突然、遠巻きに見ていた男が、俺たちに近づいてきた。
「・・・鎌田さん?」
一瞬眉をひそめる玖美。