狼ゴコロは愛のイロ
結婚式でも見なかった顔だな。
「三上さん、どうして泣きそうなのかな?まさか、旦那さんに何かされた?」
ニヤリと笑う鎌田を見下ろす。
「違います!鎌田さんこそどうしてここに」
「佐伯さんが、受け付けに三上さんの旦那さんがいると言っていたんで、見にきたんだ。結婚式には出席していないから、見てみたくてね」
「ご心配には及びません。それに、名前を間違えるなんて随分失礼な方ですね。彼女は私の妻となり、姓は三上から宗苑に変わりました」
野次馬が増えるなか、俺は彼女と繋いだ手とは反対の手を腰に置き引き寄せた。
普段なら俺もこんなことはしないし、玖美も拒もうとするだろうが、何の抵抗もなかった。
それだけ大きな恐怖を感じたのだろう。
「それは失礼。それにしても、噂は本当ですね。馬鹿デカイ身長に、人を見下すような釣り上がった冷たい瞳、まるで狼だという噂」
「鎌田さん!」
「どうせ彼女のことだって召使い同然の扱いだろう?僕は“三上さん”に戻るのを気長に待ってますから」