閑中八策
 首都圏のテキヤが暴対法の取り締まり対象になったのは、関東最大のテキヤ集団であった一家が暴力団の傘下に入ってしまったからだ。
 そのためプロのテキヤ集団全てが暴力団との関係を疑われ、地域のイベントなどからは排除されつつある。

 商店街組合の出す屋台は食べ物はまだ何とかなるが、金魚すくいや射的のような遊技型屋台は無理である。
 あれ簡単そうだが、特殊な装置が必要だし、素人においそれとは真似できない細かいノウハウがあるのだそうだ。

 浅草、上野の屋台には遊技型があるので、プロのテキヤが全て排除されたわけではないようだが、ここ5年ぐらいで値段が5割増しぐらいに上がっている。
 出店出来る場所や機会が限られて来たので、デフレの世の中にも関わらず値上げしないと採算が取れなくなったらしい。

 以前は子供が金魚すくいに何回も挑戦して一匹もすくえないで、あきらめて去ろうとすると屋台のおじさんが小さな金魚の入ったビニール袋を「はい、がんばり賃ね」などと言って渡してくれる、なんて光景も見られた。
 近年はそんな光景を見た記憶がない。テキヤさんたちもそんな余裕はなくなっているのだろう。

 テキヤとヤクザを厳密に区別するのは不可能だから、同じように取り締まらざるを得ないという警察側の事情は分かる。
 しかしそうなるとフーテンの寅さんも「反社会的勢力の一員ないしは周辺関係者」という事になって、その生きざまを描いた「男はつらいよ」シリーズは「青少年に悪影響を及ぼす反道徳的な映像作品」という事になってしまいかねない。

 もしそうなったら葛飾区にある「寅さん記念館」などはどうなるのだろう?
 時代が変わったんだよ、と言われればそれまでなのだろうが、「カタギじゃないが、ヤクザにまで落ちぶれちゃいねえ」と公言出来る人たちの存在すら許されない社会というのは、本当に今より良い未来なのだろうか?
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