閑中八策
 圧力容器の周りを這うように別系統の水循環パイプがあって、この水が圧力容器の表面から熱を受け取って沸騰、蒸発。
 この水を「二次冷却水」と言い、これが配管を伝わって発電タービンを回す。つまり燃料棒に直接触れる水と、タービン建屋へ来る水が全く別系統なのだ。

 だから全電源喪失、冷却機能喪失が起きた場合、取るべき対策はかなり違ってくる。
 福島第一の圧力容器はいわば蓋のないヤカンみたいな物で、冷却機能が失われると中の冷却水がどんどん蒸発して格納容器内に漏れてしまった。また100度で蒸発するから、燃料棒の露出も早かった。

 加圧水型は冷却機能が完全に止まっても、いわば蓋があるヤカンだから一次冷却水の完全喪失には時間がかかる。
 また圧力容器内で冷却水の異常減少が起きると、直接その中に高圧の水を注入するECCSという装置が最初から付いている。

 もちろん、だから加圧水型は沸騰水型より安全とは言えない。米国のスリーマイル島の事故を起こした2号機は加圧水型だった。
 また運転員が誤ってECCSを停止させてしまった結果最悪の事態になったという「人災」の面が大きかった事も福島第一と共通している。

 福島第一の少なくとも1号機はベントが遅くなった事が水素爆発まで行ってしまった最大の原因だった。
 だが、加圧水型原子炉のベントが福島第一の沸騰水型原子炉と同じメカニズムなのか、そうだとしても本当にそれでいいのか?

 加圧水型の場合、万一の時に圧力容器から格納容器内部に噴出してくる水蒸気は最低300度、たぶんもっと高温である。当然圧力も高い。
 自然界ではあり得ない高温高圧の蒸気を福島第一と同じ手順、同じベント装置で放出できるのか?
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