閑中八策
今回の中国外交官に対する直接の容疑は外交官に関する国際条約違反と外国人登録法違反である。
身分を偽って日本の外国人登録証を取得し、禁止されている商業活動をやったという事は事実らしいが、intelligence 活動のためにその程度の法令違反をするのは別に驚く事でもない。
確かに法律違反だが、日本人が同じような事をやっても刑務所行きになるような違法行為ではないだろう。

これに対して、必要とあれば不法侵入、脅迫、誘拐、殺人などの、どこの国でも犯罪になるような手段を意図的に使って機密情報を盗み出す行為は英語では「espionage」と言う。昔アリスの歌の題名になった「エスピオナージュ」である。日本語では諜報活動と言った方がしっくりくるだろう。

007ジェームズ・ボンドがやるような行動はこのエスピオナージュであり、これをやった外交官は文句なく「スパイ」である。
しかし例の中国人外交官はそこまであからさまな犯罪行為をやった形跡はない。

農林水産省から漏えいしたとされる機密文書にしても、夜中に忍び込んで盗んで行ったとか、大臣を脅迫して奪い取ったというのならエスピオナージュにあたるが、副大臣の方から喜んで見せてやったというのなら、あこぎではあれ情報収集の範囲内であり、諜報活動とは言えない。
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