恋時雨
「待てって!筑路!」
駅に向かう通りを筑路がどんどん歩いて行く。
仕事帰りのサラリーマンが多くそこを通っているから、上手く前に進めない。
―――ドンッ
急ごうとして走ると、人にぶつかってしまう。
「っつ、ごめんなさい!」
きっと、ぶつかってしまった人は相当いやな顔をしているだろう。
けど、今は顔を見て謝ってる場合じゃない。
「筑路……何処行った…。」
ついに、見失ってしまった。
如何しよう、何処行った……。
「はぁっ……、はーっ…ごめんな、筑路。俺はお前を見つけられない。」
お前の存在は、まだ俺の中では薄かった。
だって今、もう帰りたいって思ってるから。
如何してお前を追いかけてるんだろうって、捕まえて如何するんだろうって。
まだ1日しか経っていない。
これから、もっともっとお前を濃くしていくんだ。
俺の手で、
―――お前を捕まえられる日が来るまで。