恋時雨
あの日の事を智輝に言うと、まだ冴えない顔をしていた。
だが、智輝の心配を他所に俺たちは、普通に仲の良い恋人同士だった。
「はーっ!この映画面白かったなー」
「……うん」
今日は、増渕と映画に来ていた。
映画の内容はすごく面白かったと思うんだけど、増渕はずっと微妙な顔をしていた。
「増渕、大丈夫か?元気ねーぜ」
「ううん、へーき。」
全然、平気そうな顔してないぞ、お前。
無理して、笑うなよ。
全部俺に、教えてほしいのに……。
その時、俺と増渕の前に高校生くらいの男が2人来た。
「あれ?これ、翔斗のカノジョじゃん」
「マジだ、千愛これ……誰?」
え?
増渕は俺の彼女だろ?
誰だよ、コイツ……なんでお前の事“千愛”って呼んでるんだよ。
「翔斗……っ」
翔斗って……、誰だよ。
「誰かって訊いてんだよ!」
「……友達、友達だよ。」