恋時雨
「水咲!何か有るから怒ってんだろ?言えよ!」
ウルサイ。デカイ声を出すなよ。
教室に入り席に着くと、高倉が前のめりになって訊いてきた。
「ちょっと、“翔”あんまりしつこいと嫌われちゃうよ?」
「ソノ子……」
本当にムカつく。なんで、こんな奴のためにモヤモヤしなきゃいけないんだよ。
高槻が来ると、私は即座に立ち上がりゆかぴょんの所へ向かった。
「水咲!」
高倉が私の手を掴もうとしたのを高槻が止めた。
別に如何でも良い筈なのに苛々する。
なぜか、『触るな』とか『離せ』って思ってる自分が居る。
その事にも苛々する。
「―――昨日……」
「え?」
訊かなくて良い。訊いちゃダメだ。
そう思ってる“今”の自分が居るのに、高倉の事が好き“だった”自分がよみがえって来る。
「昨日、ソノ子ちゃんと何……してたの…っ?」
自然と涙が出て来て、そう訊いていた。
そして、私はいつの間にか高倉の腕の中に居た。
その時、捻くれた偽物の自分が戻って来た。
「離せっ!」
「あ、ごめん……」
その時、高槻が話し始めた。
「昨日、ソノは翔の家に行っておじ様に引っ越しの挨拶にうたがったわ」
「関係無い」