恋時雨


「まあ、将来お父様になるお方ですからね。」

「ソノ子!」

「婚約者」

「あら、知ってたのね。じゃあ、潔くソノに頂戴ね?」

ウルサイ、ウルサイよ。
ソノに頂戴?高倉は誰のモノでも無い。

「ソノ子、俺は婚約の件は認めていない」

「でも、もう決まってる事だし」

「大人が決めたことに口出しは出来ない世界に生きてるのはアンタでしょ、高倉」

「水咲!信じてくれよ!!」

信じる?もう私は人を信じられない位、捻くれてしまっていた。
もう、疲れた。
今までどうやって笑ってたっけ……?
今までどうやって人を信じてきたっけ……?
今までどうやって人と話してたっけ……?
どうやって……どうやって……?

判らないよ―――

「で?ソノに翔くれるの?」

「ご自由に」

「水咲!!!」

高槻なんかに出会わなかったら……高倉何かに出会わなかったら……

こんなに傷つかなくても良かったのに―――

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