王子様のみつけ方
「岬、おはよう」
朝から余計な一言をかましてくれた男に笑顔であいさつをする雅哉くん。
「おう。おい莉乃、何不機嫌そうな顔してんだよ」
雅哉くんの隣に並んでわたしたちと一緒に歩き出した男は、悪戯に笑ってわたしの顔を覗き込んでくる。
「別に、そんなことないよ」
イライラがバレないように、男のほうをチラッと見て短く言う。
「ふぅん」
わたしの答えなんて興味なさそうに、雅哉くんと話し出したこの男は近藤岬[コンドウミサキ]。
雅哉くんの親友で、わたしの恋にほんの少し協力してくれた。っていうのは嘘で。悔しいけど実はかなり協力してもらった。
イエローに近い茶色に染めた髪。くっきりとした二重瞼に筋の通った鼻、形の良い唇。身長も雅哉くんより少し高い。
雅哉くんと同じサッカー部で、エースだ。
これで女の子たちが騒がないわけがなく。
「岬くぅ~ん、おはよう」
語尾にハートマークがつくような話し方で、岬の腕に絡みついてきた女の子は、確か隣のクラスの子。
「あぁ、美優ちゃん。おはよう」
お得意の王子スマイルで美優と呼ばれた女の子に微笑みかける。
「じゃあ俺行くわ」
わたしたちのほうをチラッと振り返ってそう言うと、岬は女の子と2人で歩き出した。