隣人は高校教師
それからは、並木道をブラブラと歩いて家まで送ってもらった。
同じ家だから送るも何もないのだけど。
「今日はありがとうございました。
なんだかんだ楽しんでしまいましたし。」
ドアの前で別れ際一応お礼を言う。
彼は私の前に向かいあって立つと、ゆっくり私の顔の高さまで顔を下ろし、私を見上げる体勢になった。
至近距離にオドオドすると、なんで……と小さく言った。
へ?と目を丸くすると、
「なんで先にお礼を言うかな?
今日は俺が舞ちゃんにお礼を言いたくて誘ったのにさ。
しかも、そんなにお礼になってないし。」
「いや、そんな事…。
桜並木感動しましたし、楽しかったです。」
慌ててそう言うと、フッと優しく笑ったのでドキリとした瞬間暖かい手のひらが私の頬を両手で包んだ。
!!
驚いて、思わず後退りをすると、ドアにぶつかり追い詰められる状態になった。
包まれた顔は自然と背の高い彼を見上げていて、優しい顔の彼に全身の体温が上がる。
「あ、あの…手が………」
そう言った瞬間、甘い香りと焦点が合わない目と顔にかかった髪に考えがシャットダウンされた。
唇には柔らかくて暖かい物が当たっていて、下唇を優しく噛まれたと思ったら、ゆっくり顔が離れ、合わなかった焦点の目と合った。