だって、



あ、季壱(きいち)だ。


誰かがポロリとその名を口にした。



その誰かの呟きを聞いた周りの女の子は一斉にきょろきょろと辺りを見渡す。



――どうせ探したって、見つけたって、

彼は見つめ返してなんてくれないのに…。



そう密かに思う私は捻くれてると思う。


でもそう思うのは私が知ってるからだと思う。


“それ”を知っていれば

誰も彼の名前を口にしないし、騒いだりもしないだろう。



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