Nine
心臓が跳び跳ねるって、
こういうことをいうんだ。
まるで皮膚を突き破って
出て来そうだ。
右腕を掴まれた私は
身動きできずにその場に立ちすくむ。
「……ずっと、2人きりで話がしたかったんだよ」
低く頭に響くその声に
私は聞き覚えがあった。
怖いもの見たさとでも言うのかな。
私はゆっくりと背後の影を見上げる。
彼は、蛇のように鋭い2つの瞳で
私を見据えていた。
さっきの優しそうな人とは
思えない。