愛は満ちる月のように
悠は美月を妻だと今も思っている。本物の夫婦になることを選び、未経験の彼女を受け入れてくれた理由――

“彼は私を愛してくれている”と。


美月は下着や洋服をすべて身に着けるかどうか迷い……。

とりあえず、ベッドカバーを引き抜き、身体に巻いてルーフバルコニーに向かった。



「ユウ……さん?」


広いバルコニーには青銅色のガーデンテーブルとチェアがセットで置かれていた。他にはとくに何もなく、ほとんど使っていないのがよくわかる閑散としたスペースだ。

その向こう、バルコニーの手すりにもたれ、悠は立っていた。

片手に持っているのはevianのペットボトル。イージーパンツを穿き、シャツを羽織っている。

その横顔は美月の知らない悠だった。


「……あの……」

「ああ、悪い。眠ったのかと思ったんだ。悪かったね、ひとりにして」

「いいえ……ごめんなさい、私」

「喉は渇いてないか? 何か持って来ようか? 同じでいい?」


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