愛は満ちる月のように
そう言うと美月から視線を逸らし、まるで逃げようとする。


「待って、ユウさん! あの……私、ちゃんと話してなかったから」


悠のことが好きだと、愛していると、言葉にして伝えたことはなかった。

本当は精子バンクじゃなくて、あなたの子供が産みたい。桐生の問題さえ解決すれば、このままここで暮らしてもいい。

ただ、美月はマサチューセッツ州とニュヨーク州の弁護士資格を持っているが、日本では弁護士として働けない。日本の大学に入り直し、新たに資格を取得してもいい、とすら考えていた。

ベッドカバーを握り締め、美月が本当の願いを口にしようとしたとき――。


「すまない」

「……え?」

「僕は、君を傷つけたかもしれない」


トクンと心臓が大きく打つ。

悠の沈んだ声と表情、それが何を意味するのか? 

美月の中に嫌な予感が広がる。


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