愛は満ちる月のように
「普段はこんな無防備な真似はしないんだが……。家に女性を連れ込んだことはないし、当然、ベッドサイドにはなんの用意もしてなくて……」

「それは……どういう意味かしら?」

「だから、君の計画に支障をきたすかもしれない。一応……避妊はしたつもりだが、充分でなかったかもしれないんだ。そのときは――」


美月にはなぜ悠がこんなことを言うのかわからなかった。

そして、言葉を失う彼女の耳に信じられない台詞が飛び込んでくる。


「もし君を妊娠させたら――最悪だな」


美月は奥歯を噛み締め言葉を返した。


「あなたは子供が欲しくないから、ということ? でも私は違うわ」

「わかってる。僕の問題だ。でも子供には関係ない。そのときはできる限りの努力をするつもりだが……ちゃんと、君や子供のことを愛しているフリができるかどうか、自信がないんだ。本当にすまない」


心からの謝罪と後悔の言葉、それは美月の愛をズタズタに引き裂いた。


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