愛は満ちる月のように
(8)月が満ちるまで
「だい……じょうぶよ」
「え?」
美月は右手で髪をかき上げると、上を向きニッコリと笑った。
「妊娠に備えて周期を調えるために、ピルを飲んでるの。だから……あなたが心配するようなことにはならないわ」
その言葉に悠はあからさまな安堵の表情を浮かべた。
美月は胸の痛みを顔に出したくなくて、必死になって笑顔を作る。
「いやだ。そんなふうに言われたら、私のほうが心配になるじゃない。たくさんの女性と遊んでるあなたですもの。安全なセックスを心がけているんだと思ってたのに」
悠の手からevianをスルリと抜き取り、口に含む。まだ、充分に冷たかった。
「もちろん、心がけてるよ。僕は安全だから……君の妊娠の妨げになったりはしない」
美月が性病の心配をしたことが伝わったのだろう。悠も同じ言葉で返してきた。
ペットボトルを悠に返し、美月はバルコニーの手すりを掴んでもたれかかった。
正面に暁月城ホテルが、その向こうに国宝暁月城が見える。ライトアップされて闇の中に浮かび上がっていた。
暁の名前に似合わず、闇に溶け込むような城壁の色をしている。ひょっとしたら、暁を待つ、夜を表した城の名前なのかもしれない。
「え?」
美月は右手で髪をかき上げると、上を向きニッコリと笑った。
「妊娠に備えて周期を調えるために、ピルを飲んでるの。だから……あなたが心配するようなことにはならないわ」
その言葉に悠はあからさまな安堵の表情を浮かべた。
美月は胸の痛みを顔に出したくなくて、必死になって笑顔を作る。
「いやだ。そんなふうに言われたら、私のほうが心配になるじゃない。たくさんの女性と遊んでるあなたですもの。安全なセックスを心がけているんだと思ってたのに」
悠の手からevianをスルリと抜き取り、口に含む。まだ、充分に冷たかった。
「もちろん、心がけてるよ。僕は安全だから……君の妊娠の妨げになったりはしない」
美月が性病の心配をしたことが伝わったのだろう。悠も同じ言葉で返してきた。
ペットボトルを悠に返し、美月はバルコニーの手すりを掴んでもたれかかった。
正面に暁月城ホテルが、その向こうに国宝暁月城が見える。ライトアップされて闇の中に浮かび上がっていた。
暁の名前に似合わず、闇に溶け込むような城壁の色をしている。ひょっとしたら、暁を待つ、夜を表した城の名前なのかもしれない。