愛は満ちる月のように
目に見えるほどわかりやすい挑発。だが、悠はそれに乗ってきた。


「“美月ちゃん”はなんでもお見通しだ。――ところで、男を挑発するときは、覚悟はできてるんだろうね?」


悠の手が伸び、美月の身体を覆った黒のベッドカバーを奪い取る。


「きゃっ!」


激しいキスをされるかもしれない。ひょっとしたら、この場に押し倒される可能性もある。そこまでは考えていたが……。まさか、バルコニーで裸にされるとは思わなかった。

ここより高い建物はたくさんある。夜とはいえ、見られない保証はないのだ。


「綺麗だよ。白い肌にキスマークがよく映える」

「……目立つの間違いじゃないかしら? 形式上とはいえ、妻の裸を人に見せても平気なの?」


あえて隠そうとはせす、美月は左右に手を広げ、手すりに身体を預けた。背中にざらざらとした感触を覚える。鉄はひんやりとして冷たかった。


「それもそうだ。じゃ、公平にいこうか?」


そう言うと、悠も服を脱いだ。


「君がそのつもりなら、遠慮はいらないな。一度試してみたかったんだ……バルコニーでセックスってヤツを」


悠はキスと同時に、手すりにもたれたままの美月の太ももを持ち上げた。


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