愛は満ちる月のように
『私、セックスが気に入ったわ。でも、できる限り、不道徳な婚外交渉は持ちたくないの』 


立ったまま抱かれて、冷えた身体を温めようと寝室に入ったとき美月は口にした。


『桐生の件がどうなったか、調査が終わるのにしばらく時間がかかるんでしょう? それまで、ここで夫婦として暮らしたいわ』


調査が終わらなければいい。

あるいは、それまでに悠の気持ちを変えることができれば……。


『きっと、次の満月までもかからないわ。それまで、あなたに色々と教えて欲しいの』


悠はすでに抱いてしまったことで諦めたのだろう。

仕方なさそうに承諾してくれた。
 

 
昨日とは違う思いを抱え、美月は頭からシャワーを浴びていた。

悠が吐き捨てるように口にした『もし君を妊娠させたら――最悪だな』……最悪という言葉が何度も頭の中で回る。彼はそれほどまでに父親になりたくないのだ。


< 115 / 356 >

この作品をシェア

pagetop