愛は満ちる月のように
本当に嫌な訳ではないのだ。

ただ、いくら背伸びをしても、初めての経験に身体のほうが悲鳴を上げている。彼のもたらす快感には身を委ねたくなるが、それと不慣れなことは別だ。


「ごめんなさい……怒らせてしまった?」 

「いや、悪いのは僕のほうだ。ふざけすぎたな。今夜はこのまま眠ろう。続きは起きてからだ」

「起きたら仕事でしょう? 朝は何時に出るの? 朝食はパンでいい?」


一緒に住んでいたころ、悠は毎朝きちんと食事を取っていた。数日間でも夫婦でいるなら、朝ごはんの支度くらいはちゃんとしてあげたい。


ところが、悠の返事は美月の予想に大きく反していて……。


「仕事は休む。明日から一週間。大きな予定はないから、問題ないと思う」


その言葉に美月はなんと返したらいいのかわからない。

自分のせいで? と尋ねるべきか。

それとも、自分のために? と喜べばいいのか。


「ちょうど、秘書にも説教されたばかりだし……。綺麗な奥さんが来てくれたんだから、馬鹿な振る舞いはするなってね」

「秘書の方も、ユウさんの女癖の悪さをご存じなのね」


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