愛は満ちる月のように
「信じられないわ。あんなに仲のよさそうなご両親じゃない」


すると悠はおよそ彼らしくない皮肉めいた表情で笑ったのだ。


「ああ、セックスの相性がよくて妥協したみたいだな。まあ、本人たちが幸せだというんだから、別にいいさ。子供も次々できたしね。下の三人は望まれた命だ。でも僕は違う。――父は僕に生まれてきて欲しくなかったんだ。まあ、結果的に悪くなかったから、僕のことも大事にしてくれたけどね」


部屋の気温がグッと下がった感じがした。

美月はゴクッと唾を飲み込み、悠に尋ねる。


「そんなこと……誰から聞いたの? お父様にちゃんと確認した?」

「父は認めた。それを教えてくれたのは…………僕の姉だよ」


とんでもない言葉を口にした直後、悠は小さく笑うと「シャワーを浴びてくる」そう言って寝室を出て行ってしまう。


初恋は終わったのかもしれない。

でも、悠の心には少しだけ近づいたような気もして……。

悠の過去に何があったのか、気になり始める美月だった。


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