愛は満ちる月のように
昔のことを思い出すと、いまだに、底なし沼に片足を突っ込んだままの自分の姿が見えてくる。

悠は大きく息を吐き、そのまま沈み込んでいきそうな気分を振り払った。

自己嫌悪に陥るために、一週間の休暇を取った訳ではない。反省や後悔が必要になるとしたら、美月がボストンに帰ったあとだろう。

美月は次の満月までと言った。


(休暇の延長が必要かな……でも、あまり長く一緒にいるのは……)


すべて合わせてもたった二週間。これまでの経験と照らし合わせたら、同じ時間をかければ簡単に忘れられるだろう。



「あの……失礼ですが、お客様、何かお探しでしょうか?」


ふいに横から声をかけられ、悠はハッとした。

彼はいつの間にか女性用下着コーナーの真ん中に立っていたらしい。

目の前に陳列された多数のブラジャーに気づき、悠は口元を押さえながら、苦笑いを浮かべた。


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