愛は満ちる月のように
「そんなに神経質にならなくてもいいと思うんだけどね……誰にも頼らず、すべて自分で決める、なんて」


同じ階、サービスカウンターの横にある喫茶店に入り、ふたりは窓際の席に向かい合って座った。そこからは、駐車場の向こうに悠の住むマンションが見える。

悠はコーヒーを、美月はケーキセットを注文。ケーキが店のオススメになるセットではなく、単品を自分で選んできたほうがいい、と薦める悠の意見はあっさり却下された。


ケーキセットのこともあるが、悠が口にしたのは別のことだ。


「どうして? だって、ユウさんに買ってもらう理由がないわ」

「大した金額じゃないんだし……」

「なら、余計に構わないと思うんだけど」


数枚の春物を手に美月がレジに並んだとき、支払おうとした悠を頑なに拒否した。どうあっても彼女は自分から引こうとはしない。


「たしかに、君が買えないくらい高価なものをねだられても、僕には買えないけどね」

「なら、心配しないで。私は身体の関係を理由に、何かをねだったりはしないから」

「……それはありがたい……」


悠のほうが諦めて口を閉じた。


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