愛は満ちる月のように
すると、美月も少しは気になったようだ。


「ユウさん、怒ってるの?」

「なぜ?」

「“ありがたい”って言いながら、少しもありがたくなさそうだわ」


彼女のほうが怒ったような口調だった。どうやら、悠がさっさと話を切り上げたのが面白くなかったらしい。


「本当に思ってないからね」

「どうして? 私は金銭的にあなたの負担にはなりたくないだけよ。一セント、いえ、一円だっていやだわ」

「言っただろう? 恋人同士のように、と。それに、君は色々教えて欲しいと言いながら、少しも僕の気持ちは聞こうとしない」

「あなたの……気持ち?」


悠はひと呼吸置くと、


「僕は君に最高級のものを着せて着飾りたかった。たしかになんのためにと言われたら……ただ、見たかっただけだよ。でも、君がいやだと言うから諦めた。君の行きたい場所に連れて行くと約束したからね。それでここに来たけど……。僕が何かをしてあげたくても、君はすべて断る。すると男は思うんだ……自分は必要とされてない。恋人を楽しませることもできない無能な男だ、と」


美月は水の入ったグラスを手の中で回していたが……カタンと置き、


「……ごめんなさい……」


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