愛は満ちる月のように
今の彼女は保護しなければならない少女ではない。目が離せないほど、魅惑的なひとりの女性に過ぎない。カシュクールワンピースの胸元から形のいい鎖骨が見え……。悠はその部分に口づけ、強く吸い上げて、自分の刻印を押して回りたくなった。

動悸が早くなるのはアルコールのせいだけではないようだ。

食道から胃に流れ込んだはずの液体は、なぜか悠の下腹部に熱をもたらした。

これ以上、美月を見つめて少年のような妄想を続けたら……この場から立ち上がることもできなくなるだろう。

悠はその思いに軽く首を振る。



「あ、すみません、遅くなりまして。……差し入れをお持ちしました!」


那智と並んで大きな石の上に座る悠の横で、女性の声がした。

声のしたほうを見ると、細くて小柄な女性が満面に笑みを浮かべ立っている。

彼女は両腕でビールの箱を抱えていた。350ml缶を一ケース……かなり重そうで悠が手伝おうとしたとき、那智のほうが素早く動いた。


「来生(きすぎ)さん、どうしたの? 中山くんは一緒じゃなかったの?」


女性は少し切なそうに微笑み、


「えっと……中山さんは別の仕事で。どうもすみません、せっかく声をかけていただいたのに」

「いや、そんなことはいいんだけど。ひとりなら電話すればよかったんだ。取りにいったのに……重かっただろう?」

「いえいえ、こう見えても私、力持ちなんですよ!」


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