愛は満ちる月のように
(ふたりして私のことを笑ってるの? 今夜預けるから、しっかり教えてやって欲しい……とか?)


そんなとんでもない被害妄想まで生まれる始末だ。

美月は立ち上がると、悠の前までズンズン歩いていった。



「悠さん!」

「み、美月ちゃん? どうしたんだ!? 靴も履かずに」


言われて初めて気づくが、そんなことはどうでもいい。


「悠さんはどっちなの?」

「な、何が?」

「仕事のできる大人の女性と、華奢で可愛らしい女性――どちらが好み?」


そんなことを聞いてどうするのだろう。

見た目は大人でも中身はお子様の美月だ。

男性の自尊心を満足させ、気持ちよくさせるような言葉も言えない。高いのはプライドとIQと身長だけ。その中のひとつだって、悠を惹きつける材料にはならなかった。

おそらくあと十年、いや、五年もすれば少しは大人になれるだろう。

でもそのときには、悠はさらに先に進んでしまっている。きっと気まぐれにベッドを共にしたくなったときだけ、『美月ちゃん』と呼ばれるのだ。


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