愛は満ちる月のように
もちろん冷静に考えれば、五年後どころか二週間後には、彼女の人生から悠はいなくなっている予定なのだが……。


「選択肢はそのふたつだけかい?」

「もっと……あるかもしれないわ。あとは……少しヒステリックそうだったけれど、日本人離れしたボディラインの女性とか……」


悠のオフィスを訪ねたとき、別れ話の最中だった女性を思い浮かべる。


「何か誤解をしているみたいなんだが……。僕の好みは――」

「スタイルだったら負けないわ! 恥ずかしくてずっと隠してきたけど……胸だって小さくはないのよ!」

「あ、ああ、もちろん、それはよーく知ってるから。美月ちゃん、ひょっとして飲んでる? アルコールは苦手だっただろう?」


悠の言葉に背後から「発泡酒を……一本だけなんですけど」そんな申し訳なさそうな声が聞こえた。

美月は酷く子供扱いされた気がして、カッとなり叫んだ。


「苦手じゃないわっ! 子供扱いしないで! ただ……嫌いだから、飲まなかっただけよ。飲めない訳じゃないもの」


悠は驚いた様子で美月に近づいてくる。


「ちょっと、ふたりでその辺を歩こうか。気分は悪くないかい? ……美月ちゃん?」

「どうして? どうして、そんなふうに呼ぶの? 悠さんは……私のことが抱きたいの?」


悠の後ろに見える那智が、そのセリフを聞くなり咳き込み始めた。


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