愛は満ちる月のように
真上に悠の顔があった。

少し困ったような顔で見下ろしている。


「ユウ……さん。ここ、どこ?」

「城の近くのホテルだ。近くに病院があったから、一応往診してもらったけど……飲み慣れていないせいで急に回ったらしい。急性アルコール中毒になるほど飲んでるわけじゃないから、すぐに楽になるよ」


高ぶった気持ちが落ちついてくると、途端に美月は恥ずかしくて堪らなくなった。


「ごめんなさい……せっかくの楽しい雰囲気を壊してしまったわ。来生さんにも失礼なことを言ってしまって。もう、お店に行けないわね」


小さな声でつぶやくと、


「いや、那智さんがフォローしてくれたみたいだから、君を悪く言う奴はいないよ」


悠はベッドに腰かけながら答えた。

ギシッとベッドのスプリングが軋む音がして、少しだけ悠のほうに傾く。すると、ふたりの距離がわずかに縮まり、悠の手が美月の髪に触れた。


「私……とんでもないことを……」


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