愛は満ちる月のように
結婚も子供もあれほど毛嫌いしている悠のことだ。

美月のねだる行為が興味本位からでなく、悠を愛しているからだ、と知ったら……きっと地球の反対側まで逃げ出すだろう。


でも、さっきは酔いに任せて女の嫉妬心を見せてしまった。

そのこともフォローしておくべきかどうか、悩む美月の耳もとで悠はささやいた。


「酷い奥さんだな。僕の身体目当てってことかい?」

「え……ええ、ダメかしら?」

「いや、ダメじゃない」


最後の声は掠れていて、悠は吐息だけで答えた。

それは耳の奥をくすぐられるような、不思議な感覚だ。美月が目を閉じ身体を小刻みに震わせると、悠はさらに言葉を続けた。


「こうして君を抱く限り、他の女には一切触れない。僕のすべてが君のものだ。君も……僕のものだと思っていいだろう?」


それは魔法の呪文のようだ。

悠のすべてが自分のものなんて……永遠であるなら、どれほどの幸せだろう。


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