愛は満ちる月のように
「それはお互い様だ。どうせ声をかけたのは真のほうだろうし……」

「でも言い出したのは小太郎みたい。私に会いたいって。それで、真くんがバイクを提案してくれたらしいわ」


美月はそう言いながら悠の隣に座った。

グラスに手を伸ばし、少しワインを口に含む。


「冷やし過ぎね、味がわからないわ」

「アルコールは嫌いなのに、ワインの味はわかるんだ……」


まるで拗ねたような悠の言葉に美月はクスッと笑う。


「意地悪ね。何もわからないくらい冷たいって言ってるんだけど」

「シャンパンじゃないけど、口移しで飲ませてあげようか? 美月ちゃん」


そう言った悠の瞳に欲情の火が見えた。


(すぐそこに小太郎がいる。それに、書斎には真くんも寝ているのに……)


断らなくては、そう思いながら……美月は悠の肩にもたれかかり、目を閉じた。


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