愛は満ちる月のように
第5章 妄執
(1)試される朝
美月は朝方まで悠のベッドで過ごし、夜明け前、小太郎の眠る和室へと戻っていった。
おそらく二時間も眠ってはいないだろう。少し眠そうな美月を横目で見ながら、一睡もできなかった悠は欠伸を噛み殺す。
「悠お兄さんは僕のことが嫌いですか?」
それは美月の弟、小太郎からの質問だった。
血は繋がっていないというのだから、姉弟は似ていなくて当然だと思う。病弱だったという小太郎は小柄で年齢より幼く見える。
だが、人の目を真っ直ぐに見ることのできる少年だった。
後ろ暗いところばかりの悠にすれば、小太郎の真摯なまなざしが恐ろしく、ついつい視線を逸らしがちになってしまう。
(曲がったことの嫌いな美月の瞳によく似てる。馬鹿正直な真となら、気が合うだろう。それに比べて僕は……)
早めの朝食を終え、美月は東京に戻るふたりのためにお弁当を作っていた。
バイクの調子を見てくるとマンションの来客用駐車場に真が向かい、リビングは小太郎と悠のふたりきりだ。
「いや、まさか。昨日のことを言ってるんだったら、悪かった。本当は夕食までには戻る予定だったのに、なかなか大阪から帰れなかったんだ」
一生懸命言い訳をする悠に、小太郎は笑った。
おそらく二時間も眠ってはいないだろう。少し眠そうな美月を横目で見ながら、一睡もできなかった悠は欠伸を噛み殺す。
「悠お兄さんは僕のことが嫌いですか?」
それは美月の弟、小太郎からの質問だった。
血は繋がっていないというのだから、姉弟は似ていなくて当然だと思う。病弱だったという小太郎は小柄で年齢より幼く見える。
だが、人の目を真っ直ぐに見ることのできる少年だった。
後ろ暗いところばかりの悠にすれば、小太郎の真摯なまなざしが恐ろしく、ついつい視線を逸らしがちになってしまう。
(曲がったことの嫌いな美月の瞳によく似てる。馬鹿正直な真となら、気が合うだろう。それに比べて僕は……)
早めの朝食を終え、美月は東京に戻るふたりのためにお弁当を作っていた。
バイクの調子を見てくるとマンションの来客用駐車場に真が向かい、リビングは小太郎と悠のふたりきりだ。
「いや、まさか。昨日のことを言ってるんだったら、悪かった。本当は夕食までには戻る予定だったのに、なかなか大阪から帰れなかったんだ」
一生懸命言い訳をする悠に、小太郎は笑った。