愛は満ちる月のように
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「大阪あたりで合流できるはずだから、ちゃんと如月さんに電話しろよ」

「勇気兄ちゃんだろ? 仕事大丈夫なの?」


如月勇気(きさらぎゆうき)は父の親友の息子だ。悠より十一歳年上で警察官をしている。

悠が小学校に上がったころに弟の真が生まれた。母が真にかかりきりだったころ、よく如月家に預けられ遊んでもらったのを覚えている。悠にはなぜか一条の祖父母の家より、如月家のほうが居心地がよかった。


「ああ、確認した。如月さんの運転のほうが安心だからな」

「それはあんまりだろ。バイクに乗れない兄貴に言われたくない」

「うるさい」


勇気は白バイに乗っている。昇進したらしく最近はあまり現場には出ないというが、それでも腕前は真よりはるかに上だ。


悠より少し遅れて、美月と小太郎も来客用駐車場に下りてくる。


「いい? 真くんの言うとおりにするのよ。邪魔はしないこと。気分が悪くなったり、怖くなったりしたら、早めに言いなさい。真くんは怒らないから……わかった」

「うん、わかった」


小太郎にお弁当の入ったリュックを背負わせながら、美月は過保護な母親のように注意を繰り返している。


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