愛は満ちる月のように
~*~*~*~*~
今夜で終わりにするなら、きちんと思いを告白しよう。
那智と話をして、美月はそう思い直した。
最初は何も伝えず、物分りのいい大人の女性を気取って、笑顔で離婚届を渡すつもりだった。面倒な女とかかわった、こんなことなら助けてやるんじゃなかった、そんなふうに思われるのが怖かった。
(それじゃきっと諦めきれずに、ずっと引きずることになってしまうわね。この気持ちに決着をつけるために来たんだもの。しっかりしなきゃ!)
美月は自らを鼓舞するように顔を上げ、姿勢を正した。
その直後、ひとりの女性に声をかけられたのだった。
彼女の背後には立ち止まってこちらを見ている男性がいたが、どうやら連れではないらしい。バツが悪そうにそそくさと立ち去った。
「こんにちは、一条美月さん。私のこと、覚えていらっしゃるかしら?」
「ええ、覚えていますわ。たしか……主人の愛人さんでしたわね」
そう言うと、美月は目の前に立つ女性、植田千絵に向かって微笑んだ。
今夜で終わりにするなら、きちんと思いを告白しよう。
那智と話をして、美月はそう思い直した。
最初は何も伝えず、物分りのいい大人の女性を気取って、笑顔で離婚届を渡すつもりだった。面倒な女とかかわった、こんなことなら助けてやるんじゃなかった、そんなふうに思われるのが怖かった。
(それじゃきっと諦めきれずに、ずっと引きずることになってしまうわね。この気持ちに決着をつけるために来たんだもの。しっかりしなきゃ!)
美月は自らを鼓舞するように顔を上げ、姿勢を正した。
その直後、ひとりの女性に声をかけられたのだった。
彼女の背後には立ち止まってこちらを見ている男性がいたが、どうやら連れではないらしい。バツが悪そうにそそくさと立ち去った。
「こんにちは、一条美月さん。私のこと、覚えていらっしゃるかしら?」
「ええ、覚えていますわ。たしか……主人の愛人さんでしたわね」
そう言うと、美月は目の前に立つ女性、植田千絵に向かって微笑んだ。