愛は満ちる月のように
「私の母は父を変えたそうよ。大人になったら、私も母のようになりたいとずっと思ってきた。でも……」
一度口を閉ざし、ふたたび開く。
「でも、私は私にしかなれないみたい。苗字がなんになろうと、私のルーツがどこにあろうと、自分の居場所は自分でみつけるしかないのよ。――愛してるわ、ユウさん。あなたが子供は欲しくないというなら、作らない選択もできると思う。日本で暮らしたいなら、私は日本の弁護士資格を取り直すつもり」
美月はマリッジリングを外し、悠に渡した。
「ほんのわずかでも私を愛する可能性があるなら……あなたの手ではめて欲しい」
ボストンで急遽用意したマリッジリングだった。イニシャルも日付も彫られてはいない、シンプルなプラチナリング。
あのときは、なんとしても美月を守りたい一念で交わした結婚の誓い。
ひとまずの安全が確保されてからは、誓いを破りまくっている。いい加減、神様も呆れているだろう。
美月の傍にいたい。
彼女のすべてを独占したい。
それならここで、愛していると認めてしまえばいい。
これほどまでに美月は自分を求めてくれている。十年前に戻って、未来と自分自身をもう一度信じるなら今しかない。
悠は手の中でリングを握り締めた――。
一度口を閉ざし、ふたたび開く。
「でも、私は私にしかなれないみたい。苗字がなんになろうと、私のルーツがどこにあろうと、自分の居場所は自分でみつけるしかないのよ。――愛してるわ、ユウさん。あなたが子供は欲しくないというなら、作らない選択もできると思う。日本で暮らしたいなら、私は日本の弁護士資格を取り直すつもり」
美月はマリッジリングを外し、悠に渡した。
「ほんのわずかでも私を愛する可能性があるなら……あなたの手ではめて欲しい」
ボストンで急遽用意したマリッジリングだった。イニシャルも日付も彫られてはいない、シンプルなプラチナリング。
あのときは、なんとしても美月を守りたい一念で交わした結婚の誓い。
ひとまずの安全が確保されてからは、誓いを破りまくっている。いい加減、神様も呆れているだろう。
美月の傍にいたい。
彼女のすべてを独占したい。
それならここで、愛していると認めてしまえばいい。
これほどまでに美月は自分を求めてくれている。十年前に戻って、未来と自分自身をもう一度信じるなら今しかない。
悠は手の中でリングを握り締めた――。