愛は満ちる月のように
(8)涙のプロポーズ―2
~*~*~*~*~
「美月……どうしてもボストンに帰るのか?」
成田空港の出発ロビーで美月に声をかけるのは父、太一郎だ。
せっかく家に戻れたのにたった三日しかいないなんて、と母の茜とともに不満を口にする。
「もう随分仕事を休んじゃったから。自分から志願してシェルターの弁護士になったんだもの、これ以上勝手はできないわ」
日本に滞在したのは約三週間。
それは美月にとって、短くて長い三週間だった。
「いっそ、仕事を辞めて戻ってくるっていうのはどうだ?」
「それはダメよ。本家の卓巳おじさまもおっしゃってたじゃない。今は桐生の動きはないけど、完全に途絶えた訳ではないって。私が帰国することで、よからぬことを考える人間が現れないとも限らない。……大丈夫よ。今度は年に数回、帰って来れるんだから」
父は言い難そうに口を開き……。
「それで……悠くんとは」
「ええ、離婚するわ」
美月の左手の薬指から、マリッジリングは消えていた。
「美月……どうしてもボストンに帰るのか?」
成田空港の出発ロビーで美月に声をかけるのは父、太一郎だ。
せっかく家に戻れたのにたった三日しかいないなんて、と母の茜とともに不満を口にする。
「もう随分仕事を休んじゃったから。自分から志願してシェルターの弁護士になったんだもの、これ以上勝手はできないわ」
日本に滞在したのは約三週間。
それは美月にとって、短くて長い三週間だった。
「いっそ、仕事を辞めて戻ってくるっていうのはどうだ?」
「それはダメよ。本家の卓巳おじさまもおっしゃってたじゃない。今は桐生の動きはないけど、完全に途絶えた訳ではないって。私が帰国することで、よからぬことを考える人間が現れないとも限らない。……大丈夫よ。今度は年に数回、帰って来れるんだから」
父は言い難そうに口を開き……。
「それで……悠くんとは」
「ええ、離婚するわ」
美月の左手の薬指から、マリッジリングは消えていた。