愛は満ちる月のように
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「お兄ちゃん、遅いじゃないのっ!」


綺麗な眉を逆立てて怒っているのは妹の桜だった。

数年ぶりの再会、言葉を交わすのはそれ以上かもしれない。妙な照れがあり、悠は視線を合わせることができない。


「ああ……悪い。如月さんも、ご迷惑ばかりかけて、本当にすみませんでした」

「俺のことは気にするな。うちの親も何かあると迷惑かけてるから、お互い様ってヤツだ」


勇気は彼の父親以上に、荒っぽい印象の男だ。髪型や身なりは清潔であればそれでいいと言い、オールシーズン、Tシャツとジーンズ姿。冠婚葬祭以外で彼がスーツを着たところを見たことがない。

今も真夏のような軽装でそこに立っており、三十代半ばの印象を受ける。


「とにかく、主治医に話を聞いてこよう」


医局の場所か看護師を探そうとする悠の腕を桜が掴む。


「その前に、お母さんに会って優しい言葉をかけてあげて。どれだけ心配かけてると思ってるの? お母さんは自分が悪いって言うけど、私にはお兄ちゃんの我がままにしか見えないわ!」


正面から桜と対峙して、初めて、すぐ下の妹が母と同じ瞳をしていることに気づいた。


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