愛は満ちる月のように
『結局……警察が介入することになってしまって』


それが約一年前のことだと美月は話した。

マスコミは桐生と藤原の名前で押さえたという。どうりで、部外者である悠の耳に入ってこなかったはずだ。


『それで、君のお父さんは?』

『幸い命は取り留めたわ。ただ、腎臓をひとつ失ったの。半年入院して……今年に入って少しずつ、仕事に復帰しているみたい』


桐生善郎は管理権を返上して役目を降りた。友朗は逮捕されたが、執行猶予付き判決で釈放されたという。久幸に至ってはお咎めなし。


『そんな馬鹿な!? 君たちを誘拐しながら?』

『二度と私に近づかないという誓約書を書かせて、誘拐と監禁はなかったことになったの。その……私の将来に関わるからって』


美月の伏せた瞳を見た瞬間、悠は最悪の想像をした。憤りはあるが、口にするのも憚られる。


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