愛は満ちる月のように
だがそれでも「愛してる」の言葉を伝えて、求婚するつもりできたのだが……。


(三ヶ月遅かったわね……と言われて、追い返される気がしてきた)


悠との経験を活かして、新しい恋人をみつけた可能性だってある。

その場合は、お祝いを言うのがせいぜいで、求婚どころではないだろう。いやその前に、謝らなければならないことがあった。


ローガン空港に降り立つのは六年ぶりだ。

ニューヨークまでは来ても、どうしてもここに来ることができなかった。



『お兄ちゃんが完璧主義なのは知ってるけどね……』


ため息をつきながら桜が口にした言葉を思い出す。


『女ってね。何はなくとも、すぐに追いかけて欲しいものよ。できれば空港辺りで呼び止められて……愛してるから行くなって抱き締められたら……きっと落ちるわ。ま……それを考えたら、今からどんなに急いでも手遅れなんだけど』

『そんな可哀想なこと言ってやるなよな。兄貴は兄貴なりに頑張ってるんだよ。やるだけやってフラれたら、諦めもつくさ』


笑いながら慰めにもならないことを言ってくれたのが真だ。

どん底の悠を見ていたら殴るに殴れない。自分が美月のもとに行けるのは来年以降だから、それまでにフラれてくれたらいい。あとは自分が引き受けるから……と爽やかに言われてしまった。


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