愛は満ちる月のように
だが、それに気づいた美月が、


『あ、いえ……そういう目に遭わされたというわけじゃ。ただ、おおやけになると、そう思われるだろう、と。その、お兄さんが想像されてるようなことを……』

『ごめん、そんなつもりじゃ』

『いえ。怒ってくださったのは伝わりましたから。ただ、そうじゃない人もいるでしょう?』


美月の言葉に悠はうなずかざるを得ない。


『じゃあ、それで一件落着したんじゃ……』


悠の言葉に美月は悲しそうに首を横に振った。



桐生善郎は後見人を降りたものの、次に管理権を持つ後見人になったのは善郎の弟だった。

どれほど排除しても、美月が成人して後見人が不要となるまで誰かがその席に座る。それはすべてが桐生の関係者で、彼らが桐生の絶対権力を手にするためには美月が必要なのだ。

そして、美月を手に入れるためには、親の承諾を必要とした。


美月が桐生家のただひとりの直系である以上、それは延々と続く。


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