愛は満ちる月のように
突き返された“愛”を、もう一度求める勇気はない。
それに、美月の中には悠からもらった子供がいる。ふたりの“愛の証し”ではないけれど、美月が悠を“愛した証し”だ。
美月は振り返り、悠に向かって精一杯の笑顔を見せる。
「もう……ないわ。あなたから欲しいものは……もう、何もない」
「そうか……わかった」
短い返事とともに、悠も微笑んだ。
「もし僕に用があったら、弁護士に連絡を取ってくれ。それじゃ……仕事の邪魔をして悪かった。元気な子供が生まれることを祈ってる」
「あ……いつまで、こっちにいるの? 泊まるホテルは決まってる?」
「いや、すぐに日本に帰るんだ。おそらく、二度とボストンには来ない。だから、君や子供に会うこともないだろう……」
もう二度と悠に会えない。
彼の言葉を聞いたとき、美月の心を縛りつけた鎖がギシギシと軋んだ。膨れ上がった感情が抑え切れずに暴走してしまいそうになる。
なぜこんなことを言うのだろう?
ここまで来て、どうして美月の心を乱すようなことを……。
「余計なことを承知で言うが、そのミスター・コリガンと再婚を決めるときは、慎重にしたほうがいい。君のお父さんは素晴らしい人だけど、世の中の多くの男は違うはずだ。君には……誰よりも幸せになって欲しいと思ってる」
「……」
美月は無言でふたたび背中を向ける。
「ごめん。君を傷つけた僕が言うべき言葉じゃないな……それじゃ」
背後でドアが開き――。
それに、美月の中には悠からもらった子供がいる。ふたりの“愛の証し”ではないけれど、美月が悠を“愛した証し”だ。
美月は振り返り、悠に向かって精一杯の笑顔を見せる。
「もう……ないわ。あなたから欲しいものは……もう、何もない」
「そうか……わかった」
短い返事とともに、悠も微笑んだ。
「もし僕に用があったら、弁護士に連絡を取ってくれ。それじゃ……仕事の邪魔をして悪かった。元気な子供が生まれることを祈ってる」
「あ……いつまで、こっちにいるの? 泊まるホテルは決まってる?」
「いや、すぐに日本に帰るんだ。おそらく、二度とボストンには来ない。だから、君や子供に会うこともないだろう……」
もう二度と悠に会えない。
彼の言葉を聞いたとき、美月の心を縛りつけた鎖がギシギシと軋んだ。膨れ上がった感情が抑え切れずに暴走してしまいそうになる。
なぜこんなことを言うのだろう?
ここまで来て、どうして美月の心を乱すようなことを……。
「余計なことを承知で言うが、そのミスター・コリガンと再婚を決めるときは、慎重にしたほうがいい。君のお父さんは素晴らしい人だけど、世の中の多くの男は違うはずだ。君には……誰よりも幸せになって欲しいと思ってる」
「……」
美月は無言でふたたび背中を向ける。
「ごめん。君を傷つけた僕が言うべき言葉じゃないな……それじゃ」
背後でドアが開き――。