愛は満ちる月のように
「まったく! 飲酒が免責理由になる国なんて、日本ぐらいのものね」


“酔っていたから仕方ない”――セクハラや軽微な犯罪はそれが言い訳として通る国だ。

美月はそれを自分に適用されたことが悔しくてならない。


「郷に入りては、と言うだろう? 君なら本気で警察を呼ぶんだろうが、呼ばれた警察も迷惑だよ」

「だから、ああいったことが横行するんだわ。酔った挙げ句に集団心理が働けば、重大犯罪に繋がるのよ」

「気持ちはわかるし正論だが、警察の力は無限じゃない。犯罪者を庇うつもりはないが、自衛という言葉も覚えてくれ、美月ちゃん」

「それは……」

「子供じゃない? 大人の女なら尚更、あの程度の坊やたちくらい軽くあしらって欲しいもんだ」


理路整然と言われ、美月は言葉に詰まる。


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