愛は満ちる月のように
(9)キス
(……馬鹿げてる)
悠は心の中で何度も呟いた。
美月の肩を抱いたときに覚えた不思議な感情……それは悠にとってあり得ないことだ。
「絶対に違う……馬鹿げてる」
片側二車線の道路沿い、歩道を歩きながら悠は思わず言葉にしていた。
すれ違う小学生くらいの子供を連れた親子連れから、不審そうな顔で見られたことなど、今の彼に気づくはずもなく……。
美月がホテルの中に入るまでちゃんと見届けた。
あとになって、悠も泊まればよかったと思った。
自宅のマンションに来ることなど勧めず、美月に部屋を取ってやって、自分も隣に部屋を取れば安心できたはずだ。
それを『僕のマンションに』と口にしたから、変に警戒されたのだろう。
悠の自宅マンションは暁月城ホテルから直線で五百メートルの距離にあった。普段は会社まで車で通勤している。だが今日は、車を支社ビルの地下駐車場に停めたまま帰ってきてしまった。
明日の朝は秘書にタクシーを手配させよう。
悠はなるべく意識を美月から逸らすようにして、自分を落ちつかせた。
悠は心の中で何度も呟いた。
美月の肩を抱いたときに覚えた不思議な感情……それは悠にとってあり得ないことだ。
「絶対に違う……馬鹿げてる」
片側二車線の道路沿い、歩道を歩きながら悠は思わず言葉にしていた。
すれ違う小学生くらいの子供を連れた親子連れから、不審そうな顔で見られたことなど、今の彼に気づくはずもなく……。
美月がホテルの中に入るまでちゃんと見届けた。
あとになって、悠も泊まればよかったと思った。
自宅のマンションに来ることなど勧めず、美月に部屋を取ってやって、自分も隣に部屋を取れば安心できたはずだ。
それを『僕のマンションに』と口にしたから、変に警戒されたのだろう。
悠の自宅マンションは暁月城ホテルから直線で五百メートルの距離にあった。普段は会社まで車で通勤している。だが今日は、車を支社ビルの地下駐車場に停めたまま帰ってきてしまった。
明日の朝は秘書にタクシーを手配させよう。
悠はなるべく意識を美月から逸らすようにして、自分を落ちつかせた。