愛は満ちる月のように
だが、そんな“弱音を吐かない”という部分だけを見て、美月は強くて冷たいという連中がいる。


(彼女にたかろうとするような連中に、夫の座を譲れるものか)


家族から離れた悠にとって、かろうじて家族と呼べる存在。そんな美月を守るのは自分の役目だ。だから心配なだけだ、と悠は心の中で念を押す。

だがそれは、いったい誰に向けて念を押しているのか……。


悠の胸がざわめいたとき、脱いだ上着の胸ポケットで携帯が鳴った。

表示されているのは見覚えのない番号。まさか、と思いながら通話ボタンを押す。――と同時に。


『悠さん。助けて……お願い、私を助けて……』


それは震えるような美月の声だった。


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