愛は満ちる月のように
(動揺してるのはこっちだけ、か)


「君は嘘つきだな」


悠はバスローブ姿の美月を見るなり、余計なことだ、と思いつつ口にしてしまう。


「どういう意味かしら?」

「あのバストが貧弱なら、日本人女性の八割は貧弱になる。ヒップも……同じじゃないか?」


思わず、チラッと美月の下半身に視線を走らせた。

バスローブ越しにくっきりと浮かび上がる曲線。それは、ひたすら自分を抑えようと努力している男の目には毒となる。

悠はうっかり見惚れそうになる自分を心の中で叱りつけ、口をギュッと閉じて浴室に向かう。

 
ところが、すれ違いざま、美月が悠に声をかけた。


「さっきのことは事故だと思っています。そんなにしっかりご覧になっていたなんて……気づきませんでした」


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