愛は満ちる月のように
彼はそのまま、フッと意地悪く微笑み、


「ああ、思ってる。仰せのとおり、好きにしてみよう」


言うなり、美月を抱き上げリビングに戻った。そこに置かれた広いソファに彼女を下ろし、バスローブの胸元に手を入れると押し広げた。


「美月ちゃん、僕の何を試しているのか知らないが、そんな勝負は無意味だよ。お互いに欲しいものを手に入れよう……」


悠はその言葉が美月に誤解を与えているなど知るはずもない。

白くなだらかな肩をなぞりつつ、先ほど鏡越しに見た桜色の部分に口づけた。柔らかだった部分がしだいに硬くなり……。だが、すぐに悠は不安を感じ始める。

美月の仕草はどこからどう見ても悠を誘っている。身体を与えて懐柔すれば、簡単に離婚できると考えているのか。それとも、彼女の希望を叶えるといった悠に対するお礼か。


(本当にこんな場所で抱いてしまっていいのか?)


そのとき、悠は小刻みに震える美月の身体に気づいてしまう。 


(ちょっと待て……彼女を待つ男は本当にいるのか? だとしても、彼女はまだ……)


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