愛は満ちる月のように
今朝、那智の家で目を覚ました。

いつ彼の家を訪ねたのか記憶になかったが、自分の中で思った以上に那智を信頼していることに気づき、驚いたというのが本音だ。

何か余計なことは言わなかっただろうか、と不安になり尋ねたが……。


『さあ、どうだと思う?』


例によって例のごとく笑いながら返され、どうでもいい、と思いかけた。

だがそのとき、


『ああ、その傷の理由だけは奥さんに言わないほうがいい。――浮気しようとホテルに女を呼び出したんだけど、肝心なモノが勃たなくて引っ叩かれたんだ、と言ったら――傷が増えること間違いなしだ』


那智はさも可笑しそうに話していた。



(なんで、あんな恥をさらすようなことを言ったんだ。あの分なら……おそらく、美月とのことも口走ったに決まってる……)


昨日、家を飛び出してから、美月には連絡を取っていない。

だがエントランスのフロントに電話をかけ、妻が外出したら携帯に連絡をくれるように頼んだ。


(我ながら、何をやってるんだか……)


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