愛は満ちる月のように
桐生や藤原の名前は出さず、美月が遺産問題に巻き込まれて無理やり結婚させられそうになり、それを避けるために悠が入籍してくれた、と説明した。

美月自身、結婚は一生しないつもりだった。

でも、悠の存在は一番孤独だったときの美月を癒やしてくれた。

離れていた間、いつ悠が会いに来てくれるのか、それだけが楽しみで……。母のことを思い、子供を産みたいと願ったとき、真っ先に浮かんだのは悠の顔だった。

そして実際に悠と再会し、彼にキスされたとき、美月は今まで以上の関係を欲しがっている自分に気づいてしまう。

洗面所で裸を見られたとき、美月の本心は抱きしめてくれることを願っていた。

願いはその直後、別の形で叶えられたが……。


「本当に……ユウさんは私のことを欲しがってくれるんでしょうか? つまらないと言われたら……男性を喜ばせることなんて、できないですし」

「だからと言って、一度や二度会っただけの男に抱かれるなんて間違ってるよ。ああいうことは、経験の有無は関係なしに、好きな相手とするべきだ」

「でも、ユウさんはそう思っていないみたいです。那智さんに、しっかり教えてもらえばいい、って言うかもしれないわ」


本当に言われたらどうしようと思いつつ、美月は口にする。


「本気で思っているなら、携帯の向こうで絶叫なんかしてないよ」


那智の言葉に曖昧に微笑む美月だった。


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