ヲタク彼女
 その日、彼女が部活だったから一緒に帰ることはしなかった。その代わり、みんなと日が暮れるまで喋った。
「見ろよ。祐二のやつ、また後輩しごいてるよ」
「まあ、あいつも今年引退だからな」
 祐二は尻が軽いことでも有名だが、サッカーの事となると人が変わったように真剣だった。そのギャップが女子は好きらしい。
「でもあいつ、サッカーはすごいけどバカだからな」
 そうなのだ。あいつは昔から全ての時間をサッカーに費やしたために、勉強を全くしてこなかった。だから毎回赤点かギリギリだ。
「でも、確か聖二って祐二と幼なじみじゃなかったか」
 そうきたか。
「ああ、そうだね」
 出来ればその辺の話はしたくない。
「あっ、ああ、そうだ。聖二、もう帰んなきゃヤバいんじゃないか?」
 そう言ってくれたのは、小学校から今までずっと一緒の牧だ。
「えっ、ああ、本当だ。悪いな。先帰るわ」
 みんなに何か言われないうちに、二人で教室をでた。
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