ヲタク彼女
 「みんなが、朱音ちゃんが俺に不満あるんじゃないかって言うから、もしかしたらって思って……ごめん」
 その日、彼女の部活が終わるのを待って、ちゃんと話をした。
「そうだったんだ。なんだ。あたしてっきり、聖二が嫌々付き合ってたのかと思っちゃった。ごめんね。あたしこそちゃんと聖二の話聞かないで。あたし……嬉しかったよ」
 なんだかんだとあったけど、結局また元に戻れたし、こう言ってもらえたし、本当に良かった。
「で、何でそんな話になったの?」
 彼女が笑顔で言った。この笑顔はちょっと怖い。
「えぇっと……それはですね……」
 良かったはずなのに。
「ん?」
 えぇい!言ってしまえ!
「携帯!」
「携帯?」
「そう。朱音ちゃんの携帯の使い方っていうか、絶対俺を確認してから携帯を開くのが気になったって話をね……。そしたらあいつらがある事ない事言い出して……って朱音ちゃん?」
 彼女の歩く速さが遅くなった。
「あたし、そんな事してた?」
 彼女がどこか遠い所を見て、言った。
「うん。どうした?」
「……」
「朱音ちゃん……俺に隠し事してる?」
 俺はもう一つの選択肢を引っ張り出した。
「……」
 何も答えない。
「ごめん、変な事聞いたな。もう帰ろ」
「……あるの」
 彼女が聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で何か言った。
「えっ……?」
「あるの……隠し事」
 俺は耳を塞ぎたくなった。
 一体何だ?転校?二股か!?もしかしたら、俺と付き合ってるのが罰ゲームとか!?もしくは……
「……あたし……ヲタクなの!」
 やっぱりーー!!
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